愛犬がすやすや眠る姿って、たまらなく可愛いですよね。
ふわふわの体にあったかい体温、香ばしい肉球の匂い、心地よい寝息…一緒に眠る時間は、何にも代えがたい幸せのひととき。
でも、「犬と一緒に寝るのは良いの?悪いの?」という疑問を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
トレーナーの視点から言うと、その答えは「家庭のライフスタイルや犬の性格によって異なる」です。
一緒に寝るのは絶対にダメ!ということはありませんが、気をつけるべきポイントもあります。
ここでは、犬と一緒に寝るときのリスクを3つの視点から解説します。
犬と寝る前に考えたい「衛生面のリスク」

犬は毎日の散歩で土や草、花粉、ダニ、目に見えない病原菌などを体にまとって帰ってきます。
帰宅後に足や体を拭いても、汚れを完全に落とすのは難しいものです。
また、人と犬の間でうつる病気(人獣共通感染症・ズーノーシス)も存在します。
犬が持ち帰った菌や寄生虫が人に感染したり、逆に人が犬に病気をうつす可能性もゼロではありません。
そして、寝具は人が長時間触れる場所ですから、犬と密着して眠る習慣は、アレルギーや皮膚トラブルの原因になることも。
犬も人も清潔に保つ工夫をしたうえで、寝具の衛生管理には気を配りたいですね。
「一緒じゃないと眠れない」は危険!分離不安のサイン

「一緒に寝ると犬が安心するから」と、愛犬を布団に迎え入れている方も多いはず。
もちろん悪いことではありませんが、その関係が“依存”に変わってしまうと、分離不安のリスクがあります。
- 一緒に寝られないと吠える・震える
- ご飯を食べない、排泄ができない
- 飼い主が離れるとパニックになる
こんな風にならないための理想は「一緒に寝ることもできるし、ひとりでも眠れる」こと。
一緒に眠る時間を楽しみつつ、犬が自立できる環境も整えてあげましょう。

動物病院でのインターン中、ペットホテルに預けられた犬が分離不安の症状を示すのを何度も見てきました。
これは「甘え」ではなく、心のバランスを崩しているサインです。
寝床の“資源”を守る犬の本能

犬には「大切なものを守る」という本能があります。
それは食べ物やおもちゃだけでなく、寝床も立派な“資源”です。
例えば、愛犬がベッドやソファを「自分の場所」と強く認識すると、飼い主の寝返りやベッドの出入りに威嚇したり、噛みついたりするケースもあります。
これは犬が飼い主を見下しているのではなく、「この場所は限られているから守らなきゃ」という本能による行動です。
もし寝床をめぐるトラブルが起きているなら、犬専用の快適なベッドを用意し、サークルや係留リードで距離を確保してあげましょう。
お互いに安心できる空間を持つことが、問題解決の第一歩です。

噛んだり唸ったりする状況は、わたしたちの安眠も妨害されてしまいますし、犬からしてもいつ取られてしまうのか「不安」な状態となり、お互いがストレスフルな状態です。
一緒に寝るのはOK!でも「一緒じゃなきゃダメ」は避けよう
愛犬と同じ布団で眠る時間は、とても温かく幸せな時間です。
ただし、こうした視点を一度チェックしてみましょう。
- 清潔に眠れる環境か?
- 一緒に寝ないと落ち着かない状態になっていないか?
- 寝床の取り合いが起きていないか?
「ひとりでも安心して眠れる力」も犬の自立には大切。
一緒に眠ることも、別々に眠ることも選べる暮らしを目指すのが理想です。
「ベタベタする愛情」ではなく、「お互いが安心できる距離感」を大切にしてみてくださいね。

原案・監修:いぬのまどぐち/ドッグトレーナー・片寄智慧
編集・校正:いぬのまどぐち/今村奈緒菜