犬と人の“やりたいこと”は根本的に違います。しかし、それを無理に抑え込むのではなく、犬が社会で快適に生きていけるように“翻訳”してあげるのが、飼い主の役割です。
犬の要求を受け入れすぎて日常生活が苦しくなっている人もいれば、逆に人の都合ばかり押しつけて犬の福祉を損ねているケースもあります。
大切なのは、犬の本能と人の社会ルールのちょうどいいバランスをとること。これができれば、犬との暮らしはグッと楽になりますよ。
犬の本能 vs 人のルール
犬の「やりたいこと」は本能に根ざしている
SNSで見る犬たちや、犬友と比較して、
「なんでうちの子は言うことを聞かないんだろう」と落ち込んだことはありませんか?
でも、犬の行動は“本能”に基づいているものが多いんです。
- 匂いを嗅ぐ:環境情報を集める
- 物を噛む:ストレス解消・歯の健康維持
- 走り回る:狩猟本能の名残、エネルギー発散
- 穴を掘る:獲物探しや体温調整
- 吠える:警戒・コミュニケーション
人にとっては「迷惑」に見える行動も、犬にとっては大切な欲求の表れなんですね。

人が犬に求めるのは「社会ルール」
一方で人が犬に求めるのは、
「引っ張らずに散歩してほしい」「家具を噛まないでほしい」「吠えないでほしい」「決まった場所で排泄してほしい」など。
つまり犬の“本能”とは真逆にある「人間の社会的ルール」です。
この時点で両者の“やりたいこと”は真っ向からズレているのが分かります。

お互いが「したいこと」をしていたら、トラブルになるのは当たり前ですよね。
犬との暮らしは「異文化交流」である

犬と人の関係は、まるで異文化交流のようなもの。
旅行先で自国では常識の行動が、その国では「失礼」とされることがあるように、犬の本能的な行動も人間社会ではNGとされることがあります。
大切なのは「叱る」ことではなく「教える」こと。
犬もしつけを通して「この社会ではこう振る舞えばいいんだ」と学んでいきます。
叱るより教える!本能を活かした犬のしつけ
本能を抑えるのではなく“やってもいい形”を教える
たとえば、子犬が人や家具を噛むとつい叱ってしまいがち。
でも「噛みたい」「遊びたい」という欲求は本能です。
そこで「おもちゃで遊ぶ」「噛んでもいいガムを与える」など、欲求を満たせる代替行動を提案してあげましょう。
これなら人も犬も満足できる“ウィンウィン”の解決になります。
しつけは「行動の選択肢」を増やすこと
犬は「どうしたら褒められるか」を知らないと、自分で好きなように行動を選ぶしかありません。
インターホンに吠える犬に対しては「マットで待つ」「ハウスに入る」など、別の行動を教えることで、吠えなくても済む選択肢が増えます。

教えを積み重ねていくと、結果として「社会に適した方法で欲求を満たす」ことができるようになるのです。
犬のしつけには「禁止」ではなく「代替案」を
まとめると、犬との暮らしを快適にするカギは次の3つです。
- 犬の欲求を理解する → なぜその行動をするのかが分かる
- 社会的にOKな形に導く → 犬も人も快適に暮らせる
- 「禁止」ではなく「代替案」を用意する → ストレスを減らせる
しつけは「犬を抑え込むこと」ではなく、犬が“犬らしく”生きながら人間社会でも安心して暮らせるようサポートすること。
犬と人が“異文化交流”の相手として理解し合えれば、もっと楽しい毎日が待っていますよ!

原案・監修:いぬのまどぐち/ドッグトレーナー・片寄智慧
編集・校正:いぬのまどぐち/今村奈緒菜